日常

彼岸花と教授

夕方散歩をしていたら、
知らないおばあさんに話しかけられた。


何か宗教の勧誘かと思って
歩を止めずに耳だけ傾けていたら、


『あそこに咲いてるお花はね、大学教授が植えたお花なの。
自分が死んだ後にも残るようにって。
その教授、何年も掛けて球根から大切に育ててたんだよ。』

って教えてくれた。

彼岸花っていう名前らしい。

 その教授は5,6年前に亡くられたようだけど、
そのおばあさんと教授はご近所さんだったようだ。

そういえばちょうどその日はお彼岸。

教授が誰かに伝えたくて、
おばあさんを導いて話しかけたのかな。

なんてね。

背景を知って咲いてるお花をみると、
見え方がまた違う。

その教授は亡くなって、
そのおばあさんもいつかは亡くなって、
それでも自分が生きる限りその意志は受け継がれていく。



5分くらいお話して、別れ際に、

『感心して聞いてくれてありがとう』

って言われた。



帰り道に好きな駐車場で夕焼けをみていたら、
空がとても朱く焼けていて、

「教授が喜んでいるのかな」

「最初変な人に話しかけられたと思って
立ち去ろうとして、
おばあさん嫌な思いをしなかったかな」

「誰も知らずとも その意志を受け継いだ気がするな」



なんて思っていたら涙がとまらなかった。


おしまい

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